科学と感性が入り混じる、奈良の現代イタリアン    〜37+1〜

 

 

 

 

 

 

「ニンジンのスープ」を口に含むとニンジンの風味や香りが複合的に押し寄せ、イキイキとしたミネラル感や力強い旨味が味を支える。ニンジンのピューレに鶏のブロード(出汁)を加えて作っているのかと思いきや、「水とニンジン、少量の塩だけで作っています」とオーナーシェフの亀井俊一さん。ゲストが思わず「え!」と絶句したり「本当?」という声が挙がったりする光景は、この店では日常的だ。

 

そんな亀井さんは神戸やパリで経験を積んだ後、「水と土の研究をしたい」と某大学の農学部に入り直し、野菜作りと水質を研究して再び料理の道へ戻ってきた異色の経歴の持ち主。現在は店を運営しつつ、循環農法で自ら野菜も作るファーマーでもある。

 

 

 

 

「ベルナール・ロワゾーの“水の料理”がきっかけで、水と料理の関係性に興味を持ちました。また当時、体調を崩されたお客様から何か食べさせて、と言われて野菜のスープを作ったところタマネギやブイヨンを使わずとも美味しいものができて、より水に興味が沸いて。大学ではあちこちから水を集めて水質を研究したり、各食材に合う水を研究したり、ひたすらデータをとっていました」

 

 

 

 

こう話す“水が重要な料理”とは「各野菜に合う水のマグネシウム含有量がある」と、複数の軟水や硬水、炭酸水を調合した水で野菜を洗ったり、浸したり、茹でたり、霧吹きで吹きかけるなど、想像もつかない科学的アプローチの仕込みから生まれる。一方で肉や魚といった動物性食材は加熱する温度の高低差を大きくし、頻繁に温度を変えることで繊細に火入れ。「専門的に説明すると難しいのですが、タンパク質が凝固しないよう刺激することが大切でエビデンスもある手法です」とやはり科学的なアプローチで料理を追求する。この他、素材を活かすため乳製品を使わず、必要最低限に抑えた油脂量も特徴。現代イタリアンにしてチーズやクリームを使わないという信条に驚かされる。

 

 

 

 

「例えばカリフラワーなら焼いたもの、揚げたもの、ソースに展開したものだけで構成するなど、一皿に多種類の素材を使わず、主素材のいろいろな表情を知って欲しい。そして子供からお年寄りまで、健康な人から療養中の人までも食べられるものを作りたい」と亀井さん。

 

 

 

 

アカデミックな知見と思考、料理人としての感性、ファーマーとしての実践が創り出す料理は胃にストンと落ちて体に染み渡っていくようだ。

 

 

 

 

 

 

<店舗データ>

37+1

奈良県大和高田市片塩町12-11

Tel 0745-22-3118

https://ristorante38.com

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